『会社を潰す』ということ

『倒産』『破産』と書いてきたが、続いて『会社を潰す』。
『倒産』は会社がこのままじゃやってられないよという状態になったということ、『破産』はもう会社(正確には個人も)が無理っぽいので裁判所に清算をお願いすること。『破産』のなかでも『少額管財』という安く済む方法を選ぶと、破産申立の前に『会社を潰す』作業を進めなければならないと、前回書いた。
では、『会社を潰す』とは実際にどういう意味なのだろう。
 
なんとなく思いつきではあるのだけど、夫婦の離婚に例えてみよう。
離婚も色々あるけれど、実際に離婚届を出す前に夫婦関係が破綻してしまっているケースがほとんどだと思う。中には、離婚はなかなか成立しないまま、それぞれ完全に別の生活を行っているというケースもあるだろう。このように、離婚成立の有無にかかわらず夫婦関係が破綻して、もう無理っぽいなという状況を、会社に例えると『倒産』ということになる。
『倒産』にも清算型と再建型があるように、ここからやり直す夫婦もあると思う。しかし、どうやっても無理なので離婚という流れになることも多い。円満に離婚できるケースもあれば、裁判所に頼るケースもある。離婚して夫婦関係を終わらせることを会社に例えると『内整理』や『破産』になる。これで夫婦はおしまい。会社もおしまい。
さて、夫婦関係が破綻して離婚するにしても、具体的な行動が必要になる。弁護士に相談したり、別居のために引越をしたり、浮気の証拠を揃えたり、親族に説明したり、夫婦関係を終わらせるために実際に行動すること、これを会社に例えると『会社を潰す』ということになる。
 
弁護士に相談して債権者リストを作って、在庫や資産を処分して、従業員や得意先に今後の対応を説明して、事務所を解約して、債権者説明会を行って、こういった具体的行動が『会社を潰す』ということになる。 
会社の破産する際には、原則的に破産管財人と経営者が共同で『会社を潰す』作業を行う。しかし、管財人負荷を減らして、払うギャラを減らそうと始まったのが『少額管財』。そのため、少額管財で破産をする際には、あらかじめ経営者がある程度まで会社を潰しておくことを求められる。
  
少額管財制度ができる前、法人の破産は下記のような経過で進んでいた。
 

 
経営者が破産を決断

弁護士に相談・申立委任

申立書類作成

裁判所に破産申立
事務所は閉鎖、張り紙をする。
玄関に張り紙がしてある、ニュースなどでよく見る光景

破産管財人が在庫・備品の処分、事務所明け渡し
残されている資産の換金
従業員の解雇

処分した資産の合計から配当を算出し、債権者集会で説明、配当

破産手続終了

 
今でも、少額管財事件にはならない大型の破産事件は、この手順で進む。
しかし、少額管財では下記のように進むケースが多いらしい。
 

経営者が破産を決断

弁護士に相談・申立委任

弁護士とと話し合いながら、証拠を残しつつ、できる限りの在庫や備品の処分
可能であれば事務所明け渡し
従業員の解雇

申立書類作成

裁判所に破産申立

破産管財人が証拠書類をチェック
まだ処分されていない資産の換金

処分した資産の合計から配当を算出し、債権者集会で説明、配当

破産手続終了

 
一番の違いは、在庫や備品の処分・事務所の明け渡し・従業員の解雇を、管財人中心に行うか、経営者中心に行うか。
手間のかかる部分を、できる限り経営者と代理人弁護士で申立前にやっておいてね、というのが少額管財の考え方だ。
 
というわけで、破産をしようとおもったら、その前に『会社を潰す』作業が必要になる。
長々と『倒産』『破産』『会社を潰す』と説明してきたけれど、次回からようやく具体的な倒産の実情を書いていきます。
 
 
ブログランキングに参加してみました。よければクリックを。
人気ブログランキングへ